公益社団法人知財登録協会

産経新聞でインタビュー記事が連載されました。(第4回:2013/07/04)

パナ時代、特許を徹底的に洗い出し! 年間100億円の赤字を解消

産経新聞 74()1614分配信

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約300件の特許を出願したパナソニック時代の玉井誠一郎さん(中央) =昭和61年6月(写真:産経新聞)

 【新・関西笑談】知財ブランド協会代表 玉井誠一郎さん

 --パナソニック時代、約300件の特許を出願されていますが、会社から報奨は結構もらったのですか

 玉井 日本では企業の従業員が発明すると、特許を企業に譲渡して対価をもらう仕組みになっています。私も、まあいただいたと思いますけど、対価がどれだけ支払う仕組みになっているのかというのは不透明で、問題があります。だから、不満を感じた発明者が企業に何億円も訴えるようなことが起きるのです。

 --日亜化学工業の青色発光ダイオード(LED)訴訟などが有名ですね。最近は特許を企業が出願時から持つよう制度変更する案が検討されています

 玉井 全般的に、日本のナレッジワーカー(知識労働者)の報酬は、スポーツ選手に比べて低すぎます。いずれにしても、インセンティブを上げるのが重要でしょう。

 --パナソニックを定年退職する前の10年間は、半導体事業で知財管理を統括していたとか

 玉井 当時、パナソニックは特許のライセンス収支が悪かった。従来の知財部門は経営の視点が欠けていたので、開発部門から別組織を作って知財管理をやるよう指示されたのです。

 --どうして収支が悪かったのですか

 玉井 ライバル企業の特許についてよく知らなかったからです。出願件数を稼ぐとか、そういうことしかやってこなかった。だから、私たちは競合他社のチップを丹念に調べ、自社の特許を侵害しているかどうかを調べました。逆に自社の特許がライバルの特許を侵害していないかどうかも徹底的に洗い出しました。そうした作業を通じて、半導体関連で年間100億円もあった赤字を解消しました。

 --地道な作業で収益改善に貢献したのですね

 玉井 弁理士に払う費用も減らしました。知財に関して法律的な知識はそんなに必要ありません。大事なのは経験です。もともと特許制度はいい加減なのです。本来なら技術者が図面、写真など発明の情報を開示して伝えなければならないのに、技術を知らない弁理士に丸投げするからいい加減な内容の特許になる。特許法に基づいて認可されている特許が裁判の結果、無効になる原因はこうしたことにもあります。知財が基本的人権と同じぐらい重要なんだという意識がきわめて薄いんです。

 --現在のパナソニックは業績不振が続いています。現役時代を振り返っていかがでしょうか

 玉井 事業部制を廃止した平成13年ころから変質して強みが薄れていったと思います。社員ひとりひとりが経営者という精神があったのに、大企業に成長し、社員が"歯車"になってしまった。今年4月に事業部制は復活したようですが、あの制度はよかったと思いますよ。多様なものが共存共栄し、補完できるのが理想です。

 --21世紀の企業、産業はどうあるべきですか

 玉井 これからはソロブランドの時代です。例えば、北海道の町が林業に特化し、バイオマス事業などを興すといったような。ないものねだりではなく、自分にしかできないことを生み出そうという精神が必要です。自分にしかできない、その地方でしかできないようなものを生み出さねばなりません。(聞き手 宇野貴文)